2002年04月10日

北工会秀岳会 徳舜瞥山バス山行感想文 (2/3) 豊巻 直美
しかし、このごろの私は「山」という単語を 聞くだけで、心臓がずきんとするのです。 なぜなら、山は美しいからです。山は火 山活動や地殻変動など様々な原因で大 地が盛り上がった、自然の一部です。人 が花や木を愛でるように、私もまた山に 限りない憧れと愛しみの気持ちをいだい てやみません。山を抱きしめるわけには いきませんから、この四肢でその山を感 じ、その頂でその山が見ている風景を共 に見てみたいのです。とは言っても登山 には安全のためのルールや道具、心構 えが必要です。私はそのようなことも知ら ずに、ただただ山に登ってみたいと幼稚 な恋心のような思いでいました。

知り合いの経験豊かなアマチュアの登山 愛好家に、ある有名な山に登ってみたい がどうしたらいいかとたずねたところ、私 の経験を問われ、初心者であることを伝 えました。するとその方は非常にお怒り になり「あなたのような人間が登山者にと って一番迷惑だ。」と一喝されました。登 山はあなどるな、近くにある低い山から 手当たり次第に登りなさい、何年もかけ て登山をし、経験と体力を養わなければ ならない、でなければ他人に迷惑をかけ るだけではなく、自分の命を危険にさらす ことになる。そう、その方はおっしゃいまし た。
私は自分がとんでもないことに手を出そ うとしていることに、初めて気がつきまし た。

心に暗雲が立ちこめましたが、やはり山 への思いは募るばかりです。テレビや雑 誌で山の姿を見ると動悸がし、惹きつけ られ、ため息をつかずにはいられませ ん。なぜ山は美しいのか、これには答え ようがありません。いろいろな山がありま す。尖った山、優しく丸みを帯びた山、高 い山、体積の大きな山、人を寄せ付けな いような厳しい山、気高い山。季節や天 候、時間帯によっても一つの山は様々な 表情を見せてくれます。

私は登山を始めてみようと決心しました。 他の人には迷惑をかけない、自分や一 緒に登る人の命を危うくさせない登山をし なければなりません。
 そんな時、工学部内の掲示板で今回の 山行のポスターを見つけました。願っても みないチャンスです。走って職場にとって 返し、筆記具とメモを持ってそのポスター の内容を書き取り、すぐにリーダーに申 込みをしたのでした。その日から徳舜瞥 登山への思いは心の大半を占め、初め て登山靴を買い、登山に適したズボンを 何軒もの店を訪ねて探し回りました。

当日、徳舜瞥山の登山口に至る砂利道 をみんなで歩いていると、足もとからザク ザクと小気味よい音がし、紅葉した樹木 の葉を揺らす風が心地良く、不安がいつ の間にか消えていました。

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